エリオット波動8つの特徴⑧各波の個性と特徴を完全攻略
前回の記事では、エリオット波動の修正波の深さについて解説した。今回は、いよいよ最後の特徴である、各波動の個性について説明する。1~5波、A~E波にはそれぞれ特徴がある。それを理解することでチャートの分析のときに精度の高い複数のシナリオが立てられるようになる。
また、各波の特徴は時代と場所を変えても繰り返し現れる。これは人間の心理は今も昔も変わらないということだ。この記事を読むと、エリオット波動の波の形や比率でがどうしてそうなるのか?という本質の理解につながるので、実際の相場で様々な応用ができるようになる。
エリオット波動8つの特徴
・波動の延長
・波動の均等性
・オルタネーション
・チャネリング
・出来高
・比率関係
・修正波の深さ
・波動の個性 ←この話をします。
目次
- 1エリオット波動、各波の特徴やパターン
- 2エリオット波動、インパルス1~5波の特徴
- 2.1エリオット波動1波の特徴、出来上がる前から気がつくと有利になる。
- 2.2エリオット波動2波の特徴、下げ続行と思われるので押しが深い
- 2.3エリオット波動3波の特徴、もっとも伸びて利益になりやすい。
- 2.4エリオット波動4波の特徴、2波と違う修正波になりやすい
- 2.5エリオット波動5波の特徴、転換する前の最後の波
- 3エリオット波動修正波A~C波の特徴
- 3.1エリオット波動A波の特徴、押し目と思ったら下げの始まりだった。
- 3.2エリオット波動B波の特徴、下げの前の一時的な戻りだった。
- 3.3エリオット波動C波の特徴、目線が切り替わる波
- 4エリオット波動トライアングルのD波とE波
- 4.1エリオット波動D波の特徴
- 4.2エリオット波動E波の特徴
- 5エリオット波動、各波の特徴のまとめ
では1~5波、a~e波にはそれぞれどんな特徴があるかを説明する。
1. エリオット波動、各波の特徴やパターン
各波における個性とは、各波がオリジナルで持つ特徴のことだ。推進波の1波~5波、修正波のA波~C波、細かい話だとトライアングルのD波とE波には、それぞれの特徴がある。
その特徴についてはエリオットやその後継者たちの観察や検証により出された結論がまとめられている。それぞれの波の特徴は、相場に参加している人たちが各場面で抱く心理状態などから現れるものであり、時代や場所が変わっても各波の特徴とも言えるパターンが何度も繰り返し現れる。
波動のカウントをする上で、複数の選択肢があり迷った時などに、各波の特徴や心理状態を知っているとより確率の高い波のカウントの判断が可能となる。以下の項目では、各波の特徴について説明していく。例にとっているケースでは上昇トレンドにおける推進波と修正波を想定して説明している。
下降トレンドにおける推進波と修正波については、この説明の逆にして考えてほしい。 この説明に限った話ではないが、チャートは参加者の心理を表す、チャート分析は全てはこの応用だ。よって、チャートパターンを覚える時は、そこに生まれる心理を理解しないといけない。ただ、パターンを暗記するだけでは相場の本質を理解できない。
2. エリオット波動、インパルス1~5波の特徴
ここでは、エリオット波動のインパルス1波~5波の特徴について話しをする。エリオット波動を使う多くの人がチャートを見て最初に探すのがこの形だと思う。出来あがったチャートでは簡単に見つかるが、完成する前のインパルスを見つけるのは慣れてないとなかなか難しい。
一般的に言われるのは、「1波は出来上ってから始めてわかる、その後の2波を確認してから一番伸びる3波を狙え。」というもので、実際に3波しか狙わないトレードーもいるくらいだ。
確かに、言いたいことは理解するが「3波だけ取れば良い」とだけでエリオット波動を使うと、ロクなことにならない。理由は、形だけ暗記して当てはめようとする者が多く、他のエリオットの重要なことを覚えようとしないからだ。また、相場にはその部分以外でも利益の取れる場所はたくさんある。
これだけ押さえとけば良い、これだけやっておけばよいで儲かるほど相場は甘くない。そこで、1波から5波にはどのような群衆の心理が働くのか?これを理解することで、他の人よりも早く1波を見つけることが出来るようになる。1波がら2波で始めて気がついて3波を狙う者と、1波が始まった直後に気がつく者のどちらが有利だろうか?
答えは言うまでもない、ではインパルスの1波から5波の説明を始める。
2-1. エリオット波動1波の特徴、出来上がる前から気がつくと有利になる。
1波は、出現する前は下降トレンドで、トレーダーの多くが下げトレンド中と判断しており全体的には弱気が優勢の雰囲気の状態。
1波が出現したとしても「どうせ、また下がるだろう」と戻り売りを狙っているプレイヤーが多い。
それゆえ2波が始まると、戻り天井からの下げが始まったと判断して資金の売りをしたり、1波で買っていた者も、下げトレンドに戻る前に売り逃げようとするために大きく値を戻してしまう傾向がある。
2波の深さが1波に対して61.8%以上押すことが多い(絶対ではない)と言われているのは、このような、多くのプレイヤーが再び下げにまきこまれる前に、逃げようとする心理が働くのが理由である。
また、1波の直前に急激な下げをやっている場合は、シコリ玉(含み損を抱えて塩漬けになっていた玉)の整理が終わったために売り圧力が解消されて、いきなり力強い上昇になる場合もある。
この他にも売り玉の手仕舞いによる買いが上昇のはずみをつけることもある。この場合は、2波の深さは61.8%まで行くことはなく、比較的浅い押しで3波と続くことになる。
1波は様子見をするトレーダーが多い。しかし、経験の豊富なトレーダーは違う、直前の下げトレンドで下げのインパルスを完成していたり、修正が終わり転換を暗示させるチャートパターン(フェイラー現象によるWボトムなど)がある場合は、もしかしたら1波が始まったかも?とエントリーする。また、1波というのは大口が仕掛けている場合も少なくないので、より早く気がつくとその後の展開が有利になる。
2-2. エリオット波動2波の特徴、下げ続行と思われるので押しが深い
2波では、1波の上げが上昇が始まったとは考えず、一時的な戻りと判断しているトレーダーが多い。
1波が終わり、2波が始まると「戻り売りスタンス」を取っていたトレーダーが新規で売り玉を建て、もう一度落ちると恐怖にかられた別のトレーダーの投げ売りがおきる。
このことから深い修正が起きやすい。修正波の形もフラットやトライアングルのような横ばい型の修正波ではなく、ジグザグのような急勾配型の修正波になる。 押しの比率は1波が1に対して0.5倍(半値押し)0.618倍(61.8%押し)になることが多いとされる。
2波の修正波はトライアングルは出ないで、ジグザグやダブルジグザグが多いとされているは、この心理状態が理由である。
2-3. エリオット波動3波の特徴、もっとも伸びて利益になりやすい。
3波の値動きは、1波、3波、5波と3つのアクション波において最も強い波動となることが多い。1波の上げで疑心暗鬼だったトレーダーも、2波が1波の安値を割らなかったことで上昇に転換したという安心感から買いを入れやすい。
そこに2波の始まりから、下がると思い新規で売り玉をしていたトレーダーの損切りの手仕舞いも入る。 売り玉の損切りは買いなので、上昇局面と思い買ってくる新規のトレーダーの注文と重なりさらに上げにはずみがつく。
これが、インパルスにおける3波が「一番長くなることが多い」(厳密には「3波が一番短くなることはない」)といわれている理由である。
エリオット波動論を使うトレーダーだけでなく、ダウ理論としても上げ局面とされる場所であり、その他のテクニカル分析でも上昇環境が整うので多くの買い注文が多く入ってくる。
2-4. エリオット波動4波の特徴、2波と違う修正波になりやすい
4波は2波と比較すると、時間的な修正を含んだ波形になりやすい。これは、1波が一時的な上昇であり戻り天井と思われていた2波と前提条件が違い、多くのトレーダーが上昇トレンド中であると認識しているためである。
一言で言うと「再び上がるのはわかっている、問題は調整がいつ終わるのか?」を見極めようとしている状態である。ゆえに、頻度良く出現する修正波はフラット、トライアングル、複合修正波となる。急勾配型の波形であるジグザグは出現確率が低くなる。
そして、4波の終了地点となる目安は3波の副次波である4波であることが多く、修正波の深さ(4波の終点)は3波に対して0.382倍になるとされている。
2-5. エリオット波動5波の特徴、転換する前の最後の波
5波の上昇局面では、投資家心理が非常に強くなりやすい。これは、1波、3波と上昇局面が続くことで「価格が下がってもいずれ回復して上がるだろう!」と多くのトレーダーが強気な心理状態になっているからだ。
だが実際は、出来高の減少が見られたり、胴体の短くなったローソク足が上昇トレンドが弱くなっていることを暗示する。持っていれば、また上がると安易に考えているトレーダーの思惑に反して弱々しくじれったい動きとなる。
3波が延長(エクステンション)している場合は、5波の大きさは1波と同じになることが多い。 別のケースとして5波が3並に届かない状態を、フェイラー(未達成)と呼ぶ。これが天井圏で現れるとされるチャートパターンで有名なダブルトップである。
気をつけないといけないのは、5波が現れると転換が近いと思い込み売りを仕掛けてしまうことだ。(俺はこれで何度も酷いことになった)
1波と3波が延長してない場合は、5波が延長あることがある。
5波の副次波である5波がさらに延長するパターンにつかまると、新規に売りをしたトレーダーが思わぬ踏み上げにあうことになる。
5波が終わって下げに転じると思い込みで売り、酷いことになる。かと言って、完全に転換してからでは仕掛けが遅すぎるので、下げに転じるだろうで売りを仕掛けるなとは言わないが、強く思い込むことは避けないといけない。
3. エリオット波動修正波A~C波の特徴
エリオット波動のなかで修正波は難解に感じる人が多い。また、修正波でよく言われるのは「ハツキリしないので手を出さない方がよい」というものだ。特に素人は手を出さない方が良いと言われている。
確かにそうかもしれないが、修正波が難解なので食わず嫌いで、そのように言っている部分もあると俺は考えている。修正波は手を出さないという方針を否定はしないが、その部分を学習しないで良いとか考えないでよいということではない。
修正波にも群衆の心理は作用しているわけであり、それを無視するのはトレーダーとして正しい姿勢とは言えない。エントリーしないから知らないで良いという考え方はよくないのである。それでは、修正波のA~C波のそれぞれの特徴について、説明していく。
3-1. エリオット波動A波の特徴、押し目と思ったら下げの始まりだった。
A波の局面では、直前まで続いていた上昇トレンドから一時的な修正(押し目)であると勘違いするトレーダーが多い。
下降トレンドの始まりというよりは、押し目買いのチャンスと思い買ってくるトレーダーもいる。しかし、5波においてエンディングダイアゴナルやフェイラー現象、5波の延長が起きた場合には、下降に転じるA波となった確率が高いと判断できる。
このことを知ってないと、押し目買いのつもりでトレンド転換にまきこまれてしまうので5波の波形をよく観察することが重要である。
3-2. エリオット波動B波の特徴、下げの前の一時的な戻りだった。
B波は、短期的な反発を見せる修正波であるが、トレーダーの間では意見が別れる波だ。上昇トレンドが続くと思っているトレーダーは修正局面が終了して上昇トレンドの再開と考える。他方、悲観的な見かたをするトレーダーは価格の反落を恐れ、戻っている間に売り逃げようとする。
ただ全体的にはまだ、楽観的な見通して価格が上昇すると見込むトレーダーが多いと判断して良いだろう。下げに転換したと判断する指標は、オシレーター系のダイバージェンス、出来高の減少、天井圏で現れるとされるチャートパターンとなる。
エリオット波動の知識が備わっていれば、修正波におけるB波を戻り売りのチャンスとすることが出来る。 これも、A波の説明でも述べたように5波の波形の観察が大事である。
3-3. エリオット波動C波の特徴、目線が切り替わる波
b波までは楽観的な見方をするトレーダーもいたが、c波の大きな下落は最期まで上昇トレンドを信じていたトレーダーを失望させてしまい、上昇トレンドの終焉をもたらす。
このような理由から、c波は修正波の中で下落率が最も大きくなりやすい。ただし、短期の足においてはc波の下落率が小さいこともあり、A波と同等程度や小さいというケースもある。
珍しいケースではあるが、C波がフェイラーとなり、A波を割り込まない場合もある。その場合はフラットや複合修正波になりやすい。このような場合は修正が終われば再び上げ始めるので、C波が出現したからと言って必ず下げトレンドに転換すると思い込まない方が良い。
4. エリオット波動トライアングルのD波とE波
最後に、トライアングルで出現してくるD波とE波について説明する。推進波の5波、修正波の3波がエリオット波動における基本的な波形となる。だが、修正波の波形でもトライアングルは3波構成ではなくA波、B波、C波、D波、E波と5波構成となる。
4-1. エリオット波動D波の特徴
D波はトライアングルの副次波の4波として出現する。上昇トレンド中のトライアングルの場合、D波は上昇波動となる。通常は、一度下げてE波を確認してからトレンド方向にブレイクするのだが、D波のまま上昇していくことがある。
c波が急激な下落ではなく、A波を割らなかったり横ばいの修正の場合、トレーダーたちは「もう一度上に行くだろうと考える」こうしたときにD波が出現すると本格的な上昇再開となる。
トライアングルの仕掛けるタイミングでE波を待っていたがD波のままま上がっていくケースはこれが理由である。
4-2. エリオット波動E波の特徴
E波はトライアングルの最終局面で、次の大きな波動が出現する一歩手前の波となる。E波は、下値支持ラインを少し割り込むスローオーバーによる「騙し」が発生することもある。
スローオーバーは、大口がロスカットを誘発する「ロスカットハンティング」やふるい落としを目的として割り込ませてる場合がある。それを、新たな下げトレンドの始まりとして判断しカラ売ってしまうと、そのあとの急激な上げにまきこまれてしまう。
ふるい落としの意味はこの記事を参照
5. エリオット波動、各波の特徴のまとめ
今回は、各波の個性・特徴について説明をした。以下が各波の特徴をまとめた図になるのでもう一度見て頭に入れてほしい。
これで、エリオット波動分析をする上で役立つ特徴を8つの全てを紹介した。8記事の膨大な量の記事の途中で何度もページを閉じようと思った事だろう。
エリオット波動は基本形の波形はあるが、相場によって多様な波が形成される。そのような性質から、エリオット波動分析を実践的に活用するためには指針が必要だ。
指針をなくしては、大雑把すぎる分析になってしまう。それではエントリーポイントや利益確定、損切りの位置も曖昧になり、トレードの助けにならない。
また、何度も繰りかえすがエリオット波動論で言われていることが、チャート全てに当てはまる訳ではない。しかし、トレードチャンスを見つける武器として、この知識は非常に役に立つ。一度で覚える事は無理だろうから、何度も読み返して自分の武器の一つにしてほしい。