酒田罫線法とは一体何なのか?諸説ある歴史と概要について解説

酒田罫線法とは一体何なのか?諸説ある歴史と概要について解説

「酒田罫線についてぼんやりの知識しかない」

「諸説ある酒田罫線の成り立ちから概要について、詳しく知りたい」

この記事では、「酒田罫線」という名前を聞くことはあっても、詳しい歴史や概要についてまで分からない方に向けて解説します。

ところで、海外の酒田罫線版とも言われる「ダウ理論」とどんな違いがあるか、お分かりでしょうか?
恐らく、酒田罫線とダウ理論が相場分析において何をゴールにしているまでの把握は極めて難しいでしょう。

こうした罫線(相場の流れを分析するために用いる線)をベースとした分析手法であっても、違いが様々であることを理解し、本質的な罫線法による分析を身につけることには、大きな意味があります。

それは、長い目で相場で生き残るためには必須の知識であり、相場観を高い次元で養えるため。

そして今日、「酒田罫線」なるものは多くの相場師によって伝承され、改善されたことによって相場の動きを把握し、その経験の集積に基づいて売買の基準を示しています。
ですが、酒田罫線の明確な基準が設けられていないことからも、実戦の投資・トレードにおいて活用できるかは不明瞭な課題が残っている側面も。

ゆえに、当記事では「酒田罫線の理論を本質的かつ、体系的に理解できる」ようにまとめたものです。
相場の見方だけでなく、酒田罫線について理解を深めるうちに「実践的なやり方」も会得できるはず。

それでは、順を追って各章について詳しくご紹介するので、最後までチェックしてみてくださいね。

1. (諸説あり)本間宗久が酒田罫線を考案したとされる真相

(諸説あり)本間宗久が酒田罫線を考案したとされる真相

さて、酒田罫線といえば1700年代、第八代将軍である徳川吉宗の時代を生きた酒田の米相場師「本間宗久」によって考案されたものが初元とされています。

また、出羽の国、現在の山形県酒田市にて発祥した国内初のテクニカル分析として様々な呼び名で親しまれています。

そのため、例えば

  • 酒田日足
  • 酒田足
  • 酒田憲法(見法)
  • 本間憲法(見法)

などと呼ばれており、酒田や本間を冠した呼び名であることが分かります。

これらの呼び名から、酒田罫線に対する以下のような概要を全体的に捉えることができます。

  • 先述したように、酒田の呼称は「山形県酒田市」が由来しており、江戸時代には米の流通所として「酒田米会所」もあった。
  • 酒田罫線で呼ばれる「足」は、数字で記録される価格ではなくグラフとして描かれれる線の繋がりであるとされている。
  • 酒田罫線の分析でベースとなる足は「日足」であり、1日に1本の日足のなかに「高値」「安値」「寄付き」「大引け」の4種類がある。
  • 酒田罫線は、憲法/見法という呼び名にもあるように、相場における売買方法に関する規則、または相場の強弱を分析する統一的な見方について基準を設けている。
  • 本間という呼称は、「本間宗久」の苗字を文字ったもので一般的には「酒田罫線」や「酒田五法」、相場や人生訓についての遺訓を残した「本間宗久遺訓」「三味伝」の著者である。

つまり、酒田罫線に関する諸処の名前に対する由来からも、「酒田罫線は本間宗久によって考案されたものであり、日足を用いた米相場の分析に用いられていた。」と解釈できますし、定説にもなっているほどなのです。

しかしながら、歴史の長い酒田罫線に関して調査するほど「酒田罫線」と「本間宗久」の関連性は低いと判断せざるを得なくなります。

酒田罫線と呼ばれるように、この分析手法は酒田市が発祥であるとされていますよね。
でも、この地域における特有の相場分析(米相場における記録法や日足の書き方、見方など)と本間宗久における関係性は明示されていません。

確かに、酒田という立地は最上川の河口にも位置することで、豊富な水源と土地の活用から、全国的にも米取引が活発な地域だっとされています。
しかし、米の集散地として名高い地名として知られたのは、「西回り航路」が開通した1672年(寛文12年)以降のことであると記録されているのです。

さらに、本間宗久の父である原光は「36人衆」と呼ばれる富豪商人と称されるほどでしたが、本間家が所有する大規模な米倉庫は江戸時代の末期という記録も残っています。

同時に、官許(政府からの正式な許可を得ること)を得た日本初の米市場・堂島は1730年(享保15年)の話。
本間宗久は1717-1803年の生涯であるが、官許を得た1730年当時では取引環境の整備は十分に行われていたとは考えられないですよね。

ましてや、先進性の高い堂島市場ですら取引整備が不十分であったのだから、酒田の米市がより遅れていたことは想像に難くないでしょう。

以上から、日足を書けるぐらいの取引形態における整備は、本間宗久の死後になるのではないかと推測されるのです。

1-1. 本間宗久は本当に相場師だったのか?歴史と照らし合わせて考える

続いて、本間宗久という人物についてより深く考察するためにも、この人物について浮上する疑問点を洗い出してみます。

  • 23歳の若さにして本間家当主によって商いの才能を認められた本間宗久は養子となります。しかし、養子の身分でありながら厳しい身分社会であった封建時代(主君が家臣に領地を与えることで保護し、家臣は家来としての役割を持った)において相場に手を出すことなど出来たのだろうか?
  • 本間宗久の後半生は政商と結びついた活動をしており、江戸に居を構えていたとされます。されど、当時における政商との繋がりに関しては記録が残っていない。
  • 本間家が富豪であった理由は、小作人(地主への土地契約の見返りとして、一定の小作料を支払う人)の搾取、及び、小作米の販売による高利益の確保によるためとされる。
  • そして、士分の階級を買うことによって相模守(国が認可する正式な行政官としての地位であり、当時の中級貴族)にまでなるのだが、社会的な身分を買っていることや政治との結びつきが強いとされる。よって、果たして本当に相場師としてだけに生きた人物かは謎が深まるばかりである。

というように、本間宗久という人物に関する不明瞭な疑問は多く残ります。

そして、書籍についても本間宗久によって執筆された文章であるかは、はっきりしません

本間宗久は、「本宗莫那須剣一巻」や「本間宗久遺訓」、「三味伝」などの書籍を残したとされているが、相場についての言及がそもそもない内容であったり、弟子によって加筆・修正が加えられている説まであります。

三味伝に関していえば、弟子の葛岡五十香と呼ばれる人物によって著されたものですが、書籍の内容にはアルファベットを用いた分析手法の解説が残されています。
さらに、葛岡五十香は本間宗久よりも年長者であったことから、彼自身が執筆したものではなく、弟子によって更なる改訂が行われたという分析も。

つまり、「本間宗久」という人物が酒田新値を語る上で目安となる人物になってしまった以上、個々人による勝手な解釈と伝播によって事実も異なる記録になったのであると推測できますよね。

このような背景からも、本間宗久が実際に米相場での取引を行ったことがあるのかすら、疑いの余地があるほど。
彼は、江戸での取引において一度は失敗し、その後の大阪における取引では大成功したとされています。

だが、既出の記録とと照らし合わせると明確な証拠が残っていないことからも、「本間宗久が相場師である」とは断定できるものではありません。

ただし、だからといって酒田罫線の本質的価値が減少する訳ではなく、時代の流れと共に常にアップデートされてきたと考えていいでしょう。
あくまで、「本間宗久によって考案された酒田罫線」と考えてしまうのは、早計であることをここでは伝えておきたいです。

2. 他の分析手法にない?酒田罫線の一貫した特色を解説

他の分析手法にない?酒田罫線の一貫した特色を解説

酒田罫線は日本のテクニカル分析として世界でも評価を得ているが、誰によって創始されたものであり、その分析における手法もどのようにして発達してきたかを示す証拠はないです。

とはいえ、江戸時代という鎖国政策真っ只中の国内において創案されたアイデアであることは間違いないことから、多くの人々によって解釈と理論の検証が進められたことは十分に考えられるでしょう。

そうした経緯の中で、酒田罫線には一貫した特色があることに気づきます。

  • 日足を用いていること(今日のように短期足まで描かれることはなかった)
  • 陽陰を箱型で表記すること
  • 線の組み合わせによって相場の強弱を分析している
  • 陽線新値/陰線新値など、酒田新値の数え方を用いていること
  • 酒田新値による売買法の実践
  • 海外式の罫線理論で重視される「大勢的」な見方は欠如されている
  • 値の正確な予測はないこと

と、極めてオリジナル性の高い罫線理論を展開しているのです。

これは、海外では主流の罫線理論(ダウ理論)とは反対の分析手法が取られており、具体的な違いについて下記にて紹介します。

2-1. 大勢の動きを分析する海外の罫線(ダウ理論)

海外版の罫線理論が分析で求めることは「相場の大勢を見定めること」です。

代表的なものは「ダウ理論」であり、あなたも一度は聞いたことがあるはず。
テクニカル分析の王道であり、一般的には「先行期」「追随期」「利食い期」によって相場のトレンドが3段階から形成されると説明しています。

*ダウ理論の基礎的な知識についてはこちらをチェックしてください。

そんな海外の罫線理論(ダウ理論)では、

  • 日々における短期的な値動き
  • 中勢的な価格の値動き
  • 大勢的な価格の方向性

を重視し、なかでも大勢的な価格の方向性を見極めて投資に活かす考えが主流です。

短期的な値動きを気にすることは、相場の全体的な趨勢を完全に見失ってしまいギャンブル的な投資をしてしまうことになるため、見るべきポイントではないと指摘。

一方、中勢的な価格の値動きに関しては日々の値動きにおける高値・安値、そして前後の日足における高値・安値の連なりを観察。

結果、相場における上げ下げの傾向性について分析できると解釈されています。

最後の大勢的な価格の方向性については、中勢的な価格の高値・安値に基づいた相場の全体的な分析によるもの。

中勢的な価格の連なりにおける中央線を引くことで、上昇や下降の傾向を読み解くのです。

したがって、大勢的な価格の方向性に乗ることができれば短期や中期的な値動きに惑わされずに済むと体系化されています。
とすると、大勢的な価格の方向感を重視する海外式の罫線理論では、試し玉や平均値の建て方、自己資金に応じた売買手法などは特に重要視されなくなりますね。

2-2. 売買技法に重点を置く酒田罫線

海外式の罫線理論(ダウ理論)では、「相場の大勢的な値動きに乗ること」を目的としていることを解説しました。

が、本題の酒田罫線理論については真逆の概念を持っています。
というのも、酒田罫線の目的とするところは価格の高低を分析するよりも、売買法に重点を置いているから。

そのため、酒田罫線理論ではチャートの右側が”どうなるか”を”大勢的に”予測するものではないです。
既に描かれたチャートから、極めて近い将来における価格推移の類推、そして、精度の高い売買に注力しているのです。

海外式の罫線理論と酒田罫線理論の特色は、

 

海外式の罫線理論
  • 大勢的な流れを重視することで、短期的な小波は気にしない。
  • 相場の流れからある程度の目標を自分で判断する必要がある。
酒田罫線理論
  • 過去の蓄積した小波の分析を元に、直近の価格を類推。
  • 詳細に分析し、近い将来における値動きに対して売買を当てはめる。

 

と、相場の波ごとに分けて考えてみると、両者の区別は分かりやすいです。

酒田罫線の特色は、直近の小波(目先の値動き)を詳しく分析・研究することで、「中勢的な波」に乗るための売買を行います。
「中勢的な波」は、小波から発展した波であるから、確度の高い分析によって自然と乗れていることを目的とします。

要するに、目先の値動きから利益を乗せることができる中勢的な波をもっとも重視しているのです。

最後の大勢的な波に関しては、中勢的な波を段階的に重ねたものであり、小波/中勢の波に乗れていれば自然と乗れるものであるとされます。

以上のように、酒田罫線理論では短期的な「小波」を最重視するため、とても繊細な売買技法が求められるのです。
酒田罫線には非常に数多くの建玉法が論じられているが、ひとえに小波に乗ることを最大目的としているため。

高度な建玉法を身につければ、「小波に乗り、中勢・大勢での利益を乗せられる」ということ。

とすると、海外式の罫線理論は相場の大勢を捉える「判断」に重点を置き、酒田罫線理論では小勢を捉える「売買の技法」に重点を置いていることが分かります。
技法に重点を置いているため、判断の誤認も技法によって修正する特色があるとも解釈できますよね。

3. 酒田罫線は形を重視する?基本的な特徴と見方について

酒田罫線は形を重視する?基本的な特徴と見方について

酒田罫線に用いられる陰陽の形式について、従来では矢の上向きは「陽線」、下向きは「陰線」として線の色を一色で統一していた時期があります。

けれども、酒田罫線においては陰陽の区別をはっきりさせることで、酒田新値のカウントが取りやすいです。
ゆえに、酒田罫線を用いた分析をするためには、以下のような日足が描かれることが前提となることを把握しておきましょう。

安値(下ヒゲ)、高値(上ヒゲ)、始値(寄付)、終値(大引)の4種類で構成されている陽線

現代では、多くの投資家・トレーダーが利用している「ローソク足」の基本形であり、馴染み深く感じる方も多いことでしょう。

こちらも、安値(下ヒゲ)、高値(上ヒゲ)、始値(寄付)、終値(大引)から構成されるローソク足であり、陰線を意味します。

通常、上記の陰陽を形成するものだが、こちらの画像が示すように「高値・安値のヒゲを形成しながらも始値・終値の同時である同事線(寄引同事)があります。

上記画像は、下ヒゲが長く、上ヒゲは短い同事線(寄引同事)。

同じく、上ヒゲが長く、下ヒゲは短い同事線(寄引同事)。
いずれも、酒田新値を数える際に売買強弱のバランスを見ることができ、ヒゲの長いローソク足などは特に力の均衡を捉えることができます。

判然とした陰陽のローソク足を用いることを踏まえ、具体的な活用法について下記で解説します。

コラム:酒田罫線理論のベースは「日足」

酒田罫線の対象とされる一般的な時間軸は「日足」とされており、高度に発達した現代の取引環境とは違い、かつては日足をベースとした分析が行われてきました。

今日においては、4時間や1時間、30分、15分などの短期における足も表示されており、これらの時間軸に当てはめて酒田新値を活用したいところ。

3-1. 明確な理論がない?”およそ”で検討する酒田罫線

詳しい解説は追い追いするとして(別記事参照)、基本的な罫線理論の見方は下記の3つとなります。

  • 傾向で見る見方
  • 形から見る見方
  • 勢力から見る見方

先述した海外式の罫線理論、つまり「ダウ理論」の場合は「傾向」と「勢力」を重視した分析を主体としており、とりわけ傾向を重視。
パッと見、連なる価格の上げ下げからトレンドの傾向を推測できるため、裏付けとなる理論を与えることで「ダウ理論」は手法として成立しています。

要は、感覚的な手法であること(傾向を重視)が第一であり、それらのなかで理論となる「ルール」を設けたものであることが分かります。

他方、驚くことに酒田罫線に至っては感覚的手法に頼るあまり、明確な理論はないです。
しかしながら、この感覚的な手法の盲点となる”リスク”を徹底的に排除する努力が行われます。

すなわち、相場を動かすファクター(要因)である資金や出来高、建玉の入れ方、含み損における対処法にも注意を払うため、必然的に「形」と「勢力」を意識した陰陽のローソク足をもって判断、経験の集積を行っているのです。

それは、「傾向」を重視するダウ理論の持ち得る「理論」では補えないこと。

だが、酒田罫線理論においては「理論」という名の及ぶ意味の範囲が非常に広いです。
抽象的ではあるが、「形」や「勢力」をローソク足主体で分析することで、総合的に売買の理論を体系付けているのです。

3-2. (実践的)酒田罫線の売買における流れ

上記の項目にて、酒田罫線理論は、ローソク足の形や集合体による勢力の確認を行い、総合的に売買の判断を行うものと解説しました。

先ほども解説したように、酒田罫線では「日々の短期的な値動き」を重視するのだが、より大きな時間軸である中勢的な値動きで上手く乗れることを最重要としています。

この項目では、酒田罫線を実践する上でより具体的な「流れ」について解説します。
そこで、酒田罫線における各時間軸ごとにおける価格推移への認識について、チェックしてみましょう。

 

大勢的な値動き 日足単位での価格推移、または長期的な集合形を確認することで概念的な認識を深める。
中勢的な値動き 酒田罫線のゴールとするところで、日足を基準とした順行(順張り)の値動きを酒田新値による数え方で分析
全体的な相場におけるバランスへの認識を深め、同時に逆行(逆張り)の値動きも捉えることで、建玉法に伴う売買を行う。
短期的な値動き(小勢) 連なる日足(ローソク足)の組み合わせを意識し、「形」や「型」を見ることに注力する。

酒田新値のベースとなる分析母体で、価格の順行・逆行における「押し目」や「戻り」も見ておくことで、酒田新値が出現するポイントも抑える。
加えて、相場を動かすと考えられる市場心理も総合的に洞察を深めることで、本分析の主目的である中勢的な値動きを捉える。

と、日足や日足の集合形(基本的には2-6本以内)から分析することで、「見方」だけでなく実践的な売買法にまで落とし込めます。

その他、実践的な売買法の一部として「値動き」だけでなく、出来高や経済指標、市場に影響を与えるイベントも重視されます。
一般的には、これらは既に「見方」としては確立されているものの、総合的な売買規範としてルール化し、実践できる売買法までは確立されていません。

例として挙げれば、「ここまで価格が下がったから買う」「ここまで価格が上がったから売る」というような抽象性の高い「見方」を提示する訳ではありません。
酒田罫線では、「どのようにして買うか」「どのようにして売るか」まで考察が及んでいると考えられます。

その点、酒田新値においては独自の手法によって新値を数えることで(日足、及び、集合形の観察による)、具体的な売買実践を示しているのです。

酒田罫線における日足の認識について

酒田罫線における売買の流れについて解説したが、そもそもチャート全体を俯瞰した際に各ローソク足を捉えることも必要となります。

ゆえに、ここではローソク足(日足)の認識の仕方について画像とセットで理解を深めて欲しいです。

画像に描いたように、なだらか線(①)は「傾向線」と呼ばれるものであり、とても大雑把に値動きの傾向を読み解きます。

 

続いて、②の斜線は基本的に書き加えることは少なく、重視されにくいです。

重要なポイントは短期的な値動きに番号を振った箇所であり、③以上の数字です。

詳しく見ていくと、画像だけの判断では下落相場である時に③は逆行し、④は順行の動きであると検討できます。

けれども、酒田新値による転機を迎えた(底入れの確認完了)時、上げ相場に転換したとして③は順行、④は逆行の動きとなります。

続く⑤は目先における天井であり、ローソク足(日足)の集合形と陽線新値の出方から見ます。

一方、⑥は押し目であり、陰線新値の出方から判断しつつもローソク足(日足)の集合形も伏せて確認。

⑦は天井であり、天井の確認には陰線新値の出現方法によって判断を主とします。
だが、天井で出現しやすい型の見方も併用することで精度の高い分析を行います。

⑦の天井確認後、高値からの押しは順行、戻りは逆行の動きとなることから、下げ相場に転換したものとなります。

であるため、⑧・⑨の動きは逆行となり、下落する陰線は順行として判断できますね。

以上のように、酒田罫線の分析を深めるためには、一連のトレンドにおける「押し目」「戻り」で玉を入れることを心掛けています。

4. 酒田罫線における売買法の考え方

酒田罫線における売買法の考え方

投資の世界において、売買法の種類は非常に多いです。
国内・国外において、買い/売り共に

  • 底を付いたと判断しての買い
  • 上げの傾向と読むなら買い
  • 天井を打ったと判断しての売り
  • 下げの傾向と読むなら売り

と謳われるのが一般的ではありますが、細かな規定に基づく売買法ではないです。

それは、ただ「買い」という判断を下した理由が「底を付いたから」であって、「買う方法」という視点までは落とし込まれていないため。

すなわち、個人の資金量やエントリーの仕方(仕掛け方)、平均建値の取り方、失敗した場合の対処法など、売買に関する一貫したルールがあってこそ売買法として成立します。

酒田罫線に至っては、概念化された時から具体的な売買数量が指定されていたとされています。
その後の改良によって、「試し玉」や「本玉」、「買い(売り)乗せ」、「ナンピン」等を、個人の資金量に応じた最適な比率にて売買に当てはめる研究が進められました。

他にも、各種数列を用いる複雑な売買法について紹介されている文献はありますが、王道の定義とは逸脱してしまっているものが多いです。

とかく、個々人の資金量を元に、「買う」「売る」に関する厳密な売買方法を実践していることを頭に入れておきましょう。

4-1. 酒田罫線における順張り・逆張り

一般的に、「底を付いたから買う」「天井を打ったから売る」という売買方法(考え方)は、相場の流れに順応するものであり「順張り」と呼ばれます。

ただ、順張りといっても様々な考え方・売買方法から総称した広義な考え方であると認識をしておきたいところ。
ということで、反対の意味としては「逆張り」があり、「順張り」とは反対の意味となります。

ということは、「下がっている相場に対し、底を打つだろうと推測して買い向かう」「上がっている相場に対し、天井を付けるだろうと推測して売り向かう」というもの。

相場の傾向によってどちらが有利かは変わる訳だから、どちらが良いかを一方的に決められることではありません。
とはいえ、「罫線を見ることで相場を分析する」場合においては、どちらかに軸を決めて考察するのが基本。

実際、書店に並んでいるようなテクニカル教本を見ても「買い」の順張りに付いていくダウ理論の説明があっても、「売り」での仕掛け方についてまで解説しているケースは少ないでしょう。

その点、酒田罫線においては順張り・逆張りのどちらであっても通用する特質性があります。
理由は、ここまで紹介してきたようにローソク足(日足)をベースとし、新値を数えることによって順張り・逆張りが通用する分析を深めることができるため。

中勢を狙うために細かな値動きを捉える必要があるゆえ、順張りや逆張りの売買法も身に付けやすい特徴があります。

5. まとめ

今回は、酒田罫線法の初源となる本間宗久について、そして酒田罫線の特色や海外版罫線理論との比較、特徴等を解説しました。

歴史ある日本の相場分析の一つとして語り継がれてきた酒田罫線法。
大勢を無視し、中勢を捉えることに特化した理論の求めるところは「短期的な値動きから売買までの実践に落とし込む」ことを最終目標としています。

それゆえ、理論でありながら明確な理論を欠く(資金量や相場の状況によって技法が変わるため)という矛盾も孕んでいることも。
だが、その矛盾を飲み込むように経験的な集計・統計を重要な分析要素として扱う特質があります。

本記事を踏まえ、次回記事においては「酒田新値の取り方」について詳しく解説します。
基礎的な知識の振り返りとして、当記事を幾度となく参考にしてくださいね。