一目均衡表の見方は複雑?細かな専門用語から活用法までを詳しく解説
一目均衡表は名前の通り“ひと目”で価格の“均衡”するところを確認できるテクニカル分析です。
上手く活用すれば、トレンドの方向やエントリーポイントを発見できるでしょう。
とはいえ、「一目均衡表の見方が分からない!」「たくさん線があってややこしい」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この記事では、一目均衡表の構成要素や特徴を説明した上で、トレンドやエントリーポイントを探る方法を解説します。
最後まで読めば、一目均衡表の見方をマスターし、実際のトレードで活用できるようになりますよ!
目次
1. 一目均衡表とは?構成と特徴を解説
一目均衡表とは、チャート上に5本の線を表示させ、ローソク足との位置関係を見ながら分析する指標です。
始めに一目均衡表で使用される5つの線と、その特徴を3つお伝えします。
1-1. 一目均衡表は5本の線で構成される
一目均衡表は、このようにチャート上に5種類の線が表示されます。
一目均衡表で使用される線は、下記の通り。
- 基準線
- 転換線
- 遅行スパン
- 先行スパン1
- 先行スパン2
それぞれ解説します。
【分析の指針となる】基準線
基準線は過去26日間における最高値・最安値の中間
を示します。
もし過去26日間のドル円の最高値が110円であり、最安値が105円であれば、基準線は107.5円を表示するのです。
この基準線は名前の通り、トレンドの方向や売買シグナルの判断に活用できるので、覚えておきましょう。
【中期的な相場を分析】転換線
転換線は過去9日間の最高値と最安値の中間
を示します。
基準線の26日よりも短いため、転換線は短期的な相場を観察でき、基準線は中期的な相場を観察できるでしょう。
【当日と過去の価格を比較】遅行スパン
遅行スパンは、その日の終値を26日前に示します。
リアルタイムで描かれているローソク足を含めて、26本前に終値を表示するのです。
上記の日足チャート(ドル円)をご覧ください。
水色の線の遅行スパンは、現在価格の終値を示します。
すなわち、仮に現在の終値が105円であれば、本日のローソク足を含めて26本前のローソク足において、遅行スパンは「105円」を推移するのです。
【未来に先立って表示する】先行スパン1
先行スパン1はやや複雑です。
先行スパン1では、基準線と転換線の中間を26日後に表示させます。
例えばドル円の日足チャートで、5月5日の基準線が104円、転換線が110円を示していたとしましょう。
この時、先行スパン1では基準線と転換線の中間値である107円が、5月30日に表示されるのです。
【長期的な分析が可能】先行スパン2
先行スパン2は、過去52日間の最高値と最安値の中間値を26日後に表示します。
先行スパン1同様に、未来の時間軸に表示される線です。
転換線の9日、そして基準線の26日より長めの期間で分析できるので、長期的な相場を観察できるでしょう。
チャートでは先行スパン1がピンクの線、先行スパン2がピンクの破線で示されており、現在の価格に先立って表示されます。
また先行スパン1と2はセットで使ってトレンド分析するのが定石。
具体的な分析方法は後述します。
1-2. (国産テクニカル分析法)一目均衡表の特徴3選
一目均衡表は5つの線を用いたトレンド分析方法だと解説しました。
次に一目均衡表の特徴についてです。
特徴は下記の3点。
特徴① 日本人が作ったテクニカル分析法
特徴②“一目”で“均衡”の崩れが分かる!
特徴③ 推奨設定値がデフォルトで決まっている
それぞれ解説します。
特徴①日本人が作ったテクニカル分析法
一目均衡表の発案者は「一目山人」氏という日本人の株式評論家です。
多くのテクニカル分析の発案者は外国人ですが、この一目均衡表は国産の指標になります。
特徴②“一目”で“均衡”の崩れが分かる!
一目均衡表は、その名前の通り“ひと目”で“均衡”しているポイントの崩れを見つけられるのです。
一目均衡表では、「価格の均衡点を中間値とし、均衡の崩れた方向に相場は値動きする」という考え方をします。
仮にドル円の最高値110円、最安値102円だとした時、最高値110円に近いほど買い圧力が強いと判断できますよね。
反対に102円に近ければ売り圧力が強いと考えられます。
それでは買い・売り圧力が同じだと判断できるのはどの辺りでしょうか。
一目均衡表では、圧力が同じになるポイントを中間値と定めているのです。
最高値110円・最安値102円であれば106円が中間になり、ここで買い・売り圧力が均衡すると判断します。
そして一目均衡表を利用すれば、5本の線で短期・中期・長期的な相場の均衡点の観察が可能。
そのため均衡の崩れるポイントと、トレンド相場の発生を確認しやすくなるのです。
特徴③推奨設定値がデフォルトで決まっている
他のテクニカル分析同様、一目均衡表も期間を設定できますが、推奨設定値は自動的に決まっています。
FXツールで一目均衡表を起動させた時、デフォルトの設定数値は下記のようになっているはずです。
転換線:9日
基準線:26日
先行スパン2:52日
この設定値は一目均衡表の発案者・一目山人氏の推奨期間であるため、相場でも意識されやすくなっています。
設定値に悩んだ時は、デフォルトの期間のままでトレードすると良いでしょう。
*尚、海外の投資家の間では異なる設定値が多用される場合があります。
その設定値とは、
転換線:7日
基準線:22日
先行スパン:44日
であり、こちらのパラメーターにもよく反応す
る場合があることを頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
2. 一目均衡表の見方を知ればトレンド・エントリーポイントが分かる
一目均衡表の構成要素と特徴を解説しました。
ここからは実際に一目均衡表の見方を解説します。
見方が分かれば、トレンドや売買シグナルを見つけられるのです。
ぜひ見方をマスターして、トレードに活かしましょう。
2-1. 一目均衡表を使ったトレンドの見方3点
一目均衡表を利用したトレンドの見方は、下記の3つ。
- 基準線の方向は上下どちらか
- 雲よりもローソク足は上か下か
- 遅行スパンとローソク足の位置関係を確認
1つずつ見ていきましょう。
見方①基準線の方向は上下どちらか
基準線の向きを見れば、トレンドを把握できます。
基準線が上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンドと判断できるのです。
チャートでは黄色の破線が基準線を示します。
黄色の丸で囲っている範囲では、基準線は右肩上がりしているのが分かりますね。
基準線が上向きなので、上昇トレンドを判断できます。
加えて、ローソク足が基準線よりも上で推移しているのも確認できるでしょう。
基準線をローソク足が上回る時、より強い上昇トレンドになります。
反対に基準線は下降していて、なおかつローソク足が基準線を下回れば、より強い下降トレンドになるのです。
基準線とローソク足を見て、トレンドを分析しましょう。
見方②雲よりもローソク足は上か下か
ローソク足と雲の位置を確認すれば、トレンドの方向を判断できます。
一目均衡表でいう雲とは、先行スパン1と2の範囲のこと。
チャート上ではピンクの線が先行スパン1、ピンクの破線が先行スパン2です。
ローソク足は雲より上で推移しているので、上昇トレンドだと分かります。
逆にローソク足が雲より下であれば、下降トレンドと判断できるのです。
尚、一目均衡表の雲を実際に活用するとなると相場環境に応じた柔軟な見方が必要。
「一目均衡表の「雲」って理解が難しい…詳しい見所と売買への活用方法とは?」では、詳しい「雲」の見方や実践的な使用方法について解説していますよ。
見方③遅行スパンとローソク足の位置関係を確認
遅行スパンとローソク足の位置関係も、トレンド判断では重要です。
遅行スパンがローソク足を上回れば「上昇トレンド」、反対に遅行スパンがローソク足を下回れば「下降トレンド」となります。
水色の線が遅行スパンです。
チャートを見ると、遅行スパンはローソク足より下で推移していますね。
そのため下降トレンドであると分かるのです。
2-2. 一目均衡表を使った売買シグナルの見方について
トレンドの次は、売買シグナルについてです。
一目均衡表で売買シグナルを見つけるための方法は、下記の3つになります。
見方①転換線と基準線の動きを見る
見方②遅行スパンとローソク足を見る
見方③ローソク足と雲を見る
1つずつ見ていきましょう。
見方①転換線と基準線の動きを見る
転換線が基準線を上抜いた時は買いシグナル、下抜いた時は売りシグナルになります。
チャートでは転換線(黄色い線)が基準線(黄色の破線)を下から上へ抜いています。
これは買いシグナルとなり、実際に値上がりしているのを確認できますね。
転換線・基準線の関係は、移動平均線のゴールデンクロス・デッドクロスと同じと考えて構いません。
上記の通り転換線は過去9日の均衡点を示し、基準線は過去26日の均衡点を示します。
つまり、「転換線は短期移動平均線」、「基準線は中期移動平均線」の役割を果たすのです。
短期・中期移動平均線の交わり方を見るのと同じように、転換線・基準線の動きに注目すれば、売買シグナルを見つけられます。
見方②遅行スパンとローソク足を見る
次は、遅行スパンとローソク足の位置関係です。
遅行スパンがローソク足より上へ推移したら上昇トレンド、下へ推移したら下降トレンドとなります。
遅行スパン(水色の線)はローソク足を下から上へ抜き、ローソク足の上部で推移しました。
この遅行スパンの動きは買いシグナルです。
その後、徐々にローソク足も値上がりし始めているのが分かるでしょう。
このように遅行スパンとローソク足の動きを見ると、売買シグナルを見つけられるのです。
見方③ローソク足と雲を見る
ローソク足と雲の動きにも注目しましょう。
ローソク足が雲を上抜ければ上昇トレンド、下抜ければ下降トレンドのシグナルです。
先行スパン1(ピンクの線)と先行スパン2(ピンクの破線)の範囲である雲を、ローソク足が下抜けているのを確認できますね。
この時、売りシグナルが発生していると判断できます。
価格を観察すると、雲を下抜けて以降は下落しました。
また、一目均衡表では雲がレジスタンスライン・サポートラインの役割をします。
チャートでは下落トレンドが形成されたため、雲はレジスタンスラインとして意識され、雲より上へ値上がりしにくい状況となっているのです。
雲の厚さは、レジスタンス・サポートラインの強さを示します。
雲が厚いほどトレンドの転換は困難となり、厚い雲をローソク足が抜ければ、その分だけ強力なトレンドが発生するでしょう。
その際の売買シグナルを上手く利用すれば、大きな値幅を獲得できるチャンスになります。
2-3. 三役好転・三役逆転とは?より強いトレンドを活用して値幅を狙う
三役好転・三役逆転は、より強いトレンドのシグナルとなりますので、ぜひ押さえておきたいところ。
三役好転・三役逆転とは、これまでご紹介した「トレンドのシグナル3つ」が全てそろう状況を指します。
つまり三役好転は、下記3つのシグナル全てが見られる相場のことです。
- 転換線が基準線を上抜ける
- 遅行スパンがローソク足を上抜ける
- ローソク足が雲を上抜ける
三役逆転は、三役好転とは反対のシグナルが全てそろうこと。
実際のチャートを見て確認しましょう。
こちらは三役逆転(下落トレンド発生)を確認できます。
1つずつシグナルを確認しましょう。
- 転換線(黄色い線)が基準線(黄色い破線)を下抜ける
- 遅行スパン(水色の線)がローソク足を下抜ける
- ローソク足が雲を下抜ける
よって三役逆転であり、強い下降トレンドのシグナルが出ていると分かります。
実際に三役逆転の確認後、相場は下落し続けていますね。
三役好転・三役逆転を利用すれば、大きな利益を得られるチャンスなので、ぜひ活用してみましょう。
3. 【よくあるミス】一目均衡表を利用する際の注意点・解決策
トレンドの分析や売買シグナルを見つけるために、一目均衡表の見方を解説しました。
実際に一目均衡表を使う前に、注意点が3つあります。
- 三役好転・三役逆転でエントリーが遅くなることも
- 売買シグナルにはダマシがある
- 雲のねじれに警戒しよう
それぞれ解説します。
3-1. 注意点①三役好転・三役逆転でエントリーが遅くなることも
1つ目は、三役好転・三役逆転についてです。
三役好転・三役逆転では3つの売買シグナルを確認しますが、全てのシグナルを確認した後からでは既に大きく値動きし終えて、エントリーが遅くなるケースもあるのです。
確かに複数の売買シグナルを確認できれば、エントリーの根拠は強くなります。
しかし複数のシグナルを待ち続けた結果、トレンドに乗り遅れてしまう場合もあるでしょう。
エントリーが遅くならないようにするために、3つのシグナルのうち2つを確認した段階でエントリーする方法をおすすめします。
2つであれば、トレンドに乗り遅れるリスクを軽減できるでしょう。
ただしエントリーの根拠が薄くなれば、その分だけダマシに遭うリスクも高まるので注意してください。
3-2. 注意点②売買シグナルにはダマシがある
2つ目の注意点は、売買シグナルにダマシがある点です。
ダマシは一目均衡表に限らず、全てのテクニカル分析に共通する注意点。
テクニカル分析では、過去チャートの動きから導き出した規則性をもとにして、未来の値動きを予測します。
ただし過去のパターンが繰り返される保証はありません。
このチャートでは、遅行スパン(水色の線)がローソク足を上抜いているため、買いシグナルを確認できますね。
ところが価格は上昇せず、緩やかに下降しています。
買いシグナルと思ってロングエントリーしても、実際には逆の動きをするケースはよく見られるのです。
こうしたダマシを防ぐためには、別のテクニカル分析方法を用いると良いでしょう。
テクニカル分析は1つだけではなく、組み合わせて使用すると効果的です。
一目均衡表のようなトレンド系の指標であれば、MACDやストキャスティクスのようなオシレーター系の指標(相場の過熱感を把握できる)を組み合わせるのをおすすめします。
MACDやストキャスティクスについては、「ストキャスティクスとMACDは組み合わせるべき?トレード手法と注意点について」を参考にしてください。
3-3. 注意点③雲のねじれに警戒しよう
雲のねじれはトレンドが不明確になっている証拠ですので、注意してください。
雲のねじれとは、先行スパン1と先行スパン2が交差する現象を指します。
先行スパン1はピンクの線、先行スパン2はピンクの破線です。
チャートの一目均衡表をご覧ください。
雲を形成している先行スパン1と2が交差しているのが分かりますね。
この交差している部分を「雲のねじれ」と呼びます。
雲がねじれると、先行スパン1と2の上下の位置が入れ替わるのです。
チャート上で黄色い丸で囲った所を確認すると、先行スパン1は2の上下を行き来しているのが分かるでしょう。
通常であれば、上昇トレンドの場合は先行スパン1が上、下降トレンドなら先行スパン2が下にきます。
しかし雲のねじれによって、先行スパン1と2が何度も入れ替わっている相場では、明確なトレンドは発生していないことを意味するのです。
不明確なトレンドであると、売買シグナル通りにエントリーしてもダマシに遭うリスクが上がります。
したがって、雲のねじれを確認した時は、すぐにエントリーせずに様子を見るようにしましょう。
4. まとめ
本来、一目均衡表は奥が深いテクニカル分析方法。
発案者の一目山人氏は、一目均衡表について700ページ以上かけて書籍で解説しているほどです。
今回の記事では、重要ポイントに絞って一目均衡表を説明しました。
一目均衡表は5本の線で構成される指標であり、それぞれの線とローソク足の位置を見てトレンドやエントリーポイントを分析します。
均衡の崩れを即座に確認できる点や、自動的に推奨設定値にされている点が特徴です。
ただし遅れてエントリーしてしまうケースや、ダマシが見られるケースに注意しましょう。
今回解説した重要ポイントを押さえて、ぜひ実際のトレードで活用してみてください。