ダウ理論のだましを逆手に取る?だましの見抜き方とトレードで役立つ実践術
ダウ理論は投資家にとって役に立つ考え方ですが、過信は禁物です。
証拠金に見合わないロット数でトレードすれば、「だまし」に遭い大損する可能性はあります。
ただ、だましをどうやって避ければ良いのか分からない方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、
- ダウ理論でだましに遭う事例
- だましに遭う原因
- だましに遭った場合の対策
などを解説します。
だましに遭うのをなるべく防ぐ方法も分かるので、勝率を高くできますよ!
目次
1. ダウ理論でもだましは発生する
ダウ理論は、100年以上の歴史があるため、トレーダーなら誰もが知っている重要な理論。
ただ、ダウ理論の原則通りにトレードしたら、必ず勝てると考えるのは早計です。
なぜなら、ダウ理論の原則通りに価格が動かないケースもあるから。
ダウ理論を使いこなすためには、上手くいくパターンだけでなく、だましに遭うパターンも理解しましょう。
2. ダウ理論でだましに遭うケースとその対策とは?
この章では、ダウ理論でだましに遭うケースと、その対策についてご紹介します。
まず、ダウ理論には6つの原則があります。
もっともトレードに使いやすい原則は「トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する」です。
この原則は「高値や安値の切り上げ」もしくは「切り下げ」が続いている限りは、トレンドが継続するという理論。
つまり、条件が崩れない限りは、トレンドの動きについていくのが正しい戦略です。
ところが、理論どおり売買してもだましは避けられません。
なぜ、だましが発生するのでしょうか?
2-1. だましが発生するのは大口のトレーダーの思惑が原因
だましが発生するのは、大口のトレーダーによる「思惑」が原因と考えられます。
大口のトレーダーとは、以下のような資金量が豊富な投資家です。
- 投資銀行
- 保険会社
- 年金基金
- ヘッジファンド
資金量が多い投資家は、私たち個人投資家とは違い、自分の意思で相場を動かせます。
大口の投資家が、どのようなやり方でだましを起こしているのか解説しますね。
大口トレーダーが個人トレーダーのポジションを損切りさせたい
大口トレーダーのなかには、ヘッジファンドのように大儲けを狙っている機関投資家も存在します。
ヘッジファンドが大儲けをするためには、個人投資家の損切りを多く発生させる必要があります。
なぜなら、損切りは決済方法ではあるものの、反対売買の1種だから。
- 買いポジションを損切り=売り注文
- 売りポジションを損切り=買い注文
個人投資家の多くは、ダウ理論をはじめとしたテクニカル分析でトレードをしています。
したがって、ダウ理論のシグナル通りのタイミングは、ヘッジファンドにとって格好のチャンスになるのです。
上の図では、直近安値を割れた場合、直近高値を超えない限りは、下落します。
個人投資家は、これから本格的に下降トレンドが始まると考え、売ろうとするでしょう。
しかし、ヘッジファンドは違う考えを持っています。
個人投資家の売り注文が多く集まっている価格帯で、大量の買い注文を浴びせれば、たくさん損切りしてくれると考えるからです。
個人投資家の多くが損切り注文を出している②の価格帯を超えると、損切りにより上昇が加速!
また、証拠金に見合わないロット数で取引しているトレーダーは、急激な含み損の拡大に耐えられず、強制ロスカットされるのです。
一方で、①の価格帯で買いポジションを持っていたヘッジファンドは、さらに価格が上昇するので、まんまと大儲けに成功します。
大口のトレーダーが新たに仕掛けた
もう一つの要因は、大口のトレーダーが、新たに仕掛けたケースです。
ダウ理論では、上昇トレンド中に直近高値を超えれば、まだトレンドが続きます。
したがって、高値更新したら買うのは間違っていません。
しかし、経済指標が悪かったり、大口の投資家が売りで参入してきたりすれば、ダウ理論に関係なく下落します。
他にも為替介入と呼ばれる政策で、だましが発生することもあります。日本銀行は、リーマンショックの影響で円高が進んでいた2010年〜2011年頃にかけて、為替介入を行いました(参考)。
為替介入月 | 為替介入額 |
---|---|
2010年8月~9月 | 2兆1,249億円 |
2011年2月~3月 | 6,925億円※ |
2011年7月~8月 | 4兆5,129億円 |
2011年10月~2011年11月 | 9兆916億円 |
参考:日銀介入状況 | FX・外貨両替のマネーパートナーズ -
※アメリカ、カナダ、ヨーロッパの中央銀行も協調実施
長期的には円高が進んでいましたが、日本銀行ほど大口の資金を持つ投資家に介入されれば、いったんは急上昇せざるを得ません。
これこそ、相場の世界が、大口のトレーダーによって支配されている証拠です。
3. ダウ理論でだましに遭う事例とは?
ここからは、ダウ理論の第6原則でだましに遭うケースについて、上昇トレンド時の具体例を用いて、説明します。
第6原則を用いる場合、以下のいずれかの方法で売買します。
- 直近高値を超え、トレンドが更新しているケース
- 直近安値を割れたため、トレンドが転換したケース
チャートも用いて具体的に説明しますね!
3-1. トレンドの更新がだましのケース
高値を切り上げ続けている限り、トレンドは続く可能性が高くなります。
ただ、トレンドはいつまでも続かないので注意が必要です。
例えば、以下のチャートを見ると、直前に高値を更新しています。
ところが、上昇は長く続かず、直近安値を下回ってしまいました。
直近安値を下回った場合、安値切り上げの条件を満たさなくなるので、トレンド転換の可能性が出てきます。
つまり、このようなケースは「だまし」となります。
3-2. トレンド転換がだましのケース
上のチャートを見てください。
直近安値を割れたため、少なくとも、上昇トレンドが終わった可能性があります。
しかし、下落の動きは長く続きませんでした。
むしろ、再び、直近高値を超える動きになり、トレンド転換はだましだったのです。
このように、直近安値を割れても、すぐに下落トレンドに転換するとは限りません。
4. ダウ理論でだましに遭った場合の対策とは
ダウ理論でトレードした場合、だましを100%避けるのは無理です。
しかし、だましに遭っても、ショックを受ける必要はありません。
いくつか、だましに遭った場合の対策についてご紹介します。
4-1. だまされた方向にそのまま乗る
1つ目の対策は、だまされた方向にそのまま乗ること。
うまくいけば、損失を取り戻せるかもしれません。
例えば、トレンド転換を見越したのに「だまし」だったケースで考えます。
②で直近安値を更新したため、買いポジションは損切りしましょう。
しかし、同時に売りポジションを保有してください。
結局、だまされた方向のポジションを保有したことで、損切りで失った金額よりも多くの利益を獲得しました。
とはいえ、この方法にもデメリットはあります。
何度もだましに遭い、損失がさらに増えるケースもあるからです。
そのため、ロット数を増やしてのエントリーは避けてくださいね!
4-2. 2回だましがあった後にエントリーする
だましを避けたければ、だましが2回あった後に、エントリーするのが安全です。
チャンスに乗れない可能性もありますが、だましに遭うリスクを下げられるので、無駄な損失も減るでしょう。
例えば、以下のチャートは、上昇トレンドから直近高値を超えたところです。
シグナルに従う場合は、トレンドが更新したので、買っても良い局面です。
しかし、すぐに買わずに、2回だましが発生するまで待ちましょう。
そして、3回目で買いのシグナルが出たタイミングで、初めて買うのを推奨します。
相場の世界では、シグナルが出ても、素直に転換するケースは多くありません。
一旦エントリーを待ち、無駄な損切りを避けた方が、利益率が上がりやすくなります。
5. そもそもだましを避けたい場合にチェックすること3つ
ダウ理論でエントリーする場合、そもそもだましを避けたい方も多いでしょう。
- 出来高を確認する
- ほかのインジケーターを併用する
- 上位足と同じ方向でのみエントリー
そこで、どのような方法でだましを避ければ良いのか見てみましょう!
5-1. 出来高を確認する
ダウ理論の第5原則に「トレンドは出来高でも確認されなければならない」があります。
本格的な上昇トレンドであれば、出来高も伴って上昇するのが自然。
ところが、出来高があまり増えていないのに、価格が上昇している場合は、要注意です。
一時的に上昇しているだけの可能性もあります。
そのため、エントリーする際に、出来高をチェックする方法はおすすめです。
5-2. 他のインジケーターを併用する
ダウ理論のみでは、高い勝率は見込めず、だましによる損失も多くなるでしょう。
そこで、他のインジケーターと併用し、両方のシグナルが揃っている場合のみエントリーしてはどうでしょうか?
そうすることで、より勝率の高いポイントを絞れるので、だましに遭うリスクを減らせるでしょう。
また、上のチャートでは、売りシグナルの包み足が出現しています。
ダウ理論の転換シグナルも発生したので、上昇トレンドが終わる可能性が高くなりました。
このように2つの判断方法で、同じように売りのシグナルが出ていれば、勝てる可能性が上がります。
ダウ理論とローソク足を組み合わせる方法については、「【信頼できる】ダウ理論とローソク足を見てチャート分析の精度を上げる方法を解説」にて解説しています。
ぜひ参考にしてみてくださいね!
5-3. 上位足と同じ方向でのみエントリー
相場の原理で、下位足は上位足の値動きに支配されています。
上位足の値動き | 下位足で勝ちやすい売買方法 |
---|---|
上昇中 | 買い |
下降中 | 売り |
例えば、上位足が上昇している場合、下位足の値動きも上昇する局面が多くなるでしょう。
したがって、上位足で上昇している場合は、以下のような戦略でトレードした方が勝ちやすくなります。
- 上昇トレンド中の高値更新で買い
- 下降トレンドから直近高値を越えたら買い
上位足の値動きがはっきりしていれば、だましに遭うリスクを大幅に下げられるでしょう。
6. まとめ
ダウ理論通りにトレードしても、だましに遭うケースは多くあります。だからといって、ダウ理論は使えないわけではありません。
大口の機関投資家の思惑も予測しながらトレードすれば、だましに遭っても動じなくなるでしょう。
むしろ、だましを利用すれば、これまでよりも稼げるかもしれません。