エリオット波動が使えない真の理由。こじつけ・後付けの真相は使い方の誤り

エリオット波動が使えない真の理由。こじつけ・後付けの真相は使い方の誤り

エリオット波動論は、FXや株式などの相場の値動きに現れる、一定のパターンを体系化した波動理論である。
テクニカル分析の一つに数えられ、熱心な信奉者も多い。

このエリオット波動論は、今から100年くらい前にダウ理論の研究をしていた、ラルフ・ネルソン・エリオット(レストランと鉄道会社を専門とする会計士)が開発し、チャールズ・J・コリンズを通して世の中に広まった。

その後、ハミルトン・ボルトン、ロバート・プレクターなどにより体系化され、今に伝わっているのが、本記事で解説するエリオット波動論だ。

本記事は、エリオット波動論を実際に運用して、そのメリットやデメリットを理解している俺が、「なぜ使えるのか?」あるいは、「なぜ使えないという人がいるのか」の理由を客観的にまとめた。

「エリオット波動って何だろう?」「本当に使えるのかな?」と、まだ本腰を入れて学習しようか決めかねている方に、ぜひ参考にしてほしい。

目次

1. エリオット波動は本当に使えるのか?

エリオット波動は本当に使えるのか?

エリオット波動に関しては諸説あり、「エリオット波動は使えない」という者もいれば、「エリオット波動は使える」という者もいる。否定派と肯定派の両方の意見を聞くと、それぞれに、それなりの説得力がある。どっちが正しいとも言えないので、初心者は混乱するだろう。

俺の意見を、結論から言うと「エリオット波動は使える」である。

なぜ使えるといえるのかを否定派、肯定派の意見を取り入れながら、説明していこう。
もし、このサイトに訪れたあなたが、「エリオット波動って何だろう?」「本当に使えるのかな?」と、まだ本腰を入れて学習しようか決めかねている場合は、「なぜ使えるのか?」の理由をまとめた別ページを参照してほしい。

というのも、「エリオット波動論」は覚えることが多すぎる。要点をわかりやすくまとめたつもりではあるが、ネットサーフィンのついでに、さらっと斜め読みして理解することは不可能である。

このサイトにあるエリオット波動関連の記事の膨大な量に辟易するだろうし、読み続けるモチベーションがわかないかもしれない。しかし、付け焼刃の知識では、エリオット波動を本当に使えるようにはならない。

ある一部分だけを見て、エリオット波動を知った気になり、FXや株式に用いたとしたら、いつか大やけどをする可能性が高い。そして、その程度の理解では、一生使える知識にはなりえないだろう。

ここまで言っても、あなたは「完璧に理論を理解する」ことに興味はなく、「『エリオット波動論』を参考にしてお金を稼げるのか?」に興味があるのかもしれない。

そこで、さらっと概要だけ知りたいという人のために、俺の独断と偏見ではあるが、「最低限、これだけ押さえていたら使える」という部分をまとめたページを用意した。

このページを見ただけでも、相場の環境認識にある程度は役に立つはずである。そこで、概要をざっくりと理解した上で、このページに戻ってきた方が理解が深まるだろう。

注釈 「環境認識」
環境認識とは、相場の状態が「上昇トレンドなのか?」「下降トレンドなのか?」「それとも横ばい(レンジ)か?」この3つを見極めることで、「相場の状態を把握する」などと表現されることもある。
また、その状態を把握したとしても、「それがどの程度続くのか?」を考えないといけない。「いつまで続くのか?」のイメージが出来ないと「上昇だと思って買ったら、スグに転換して下降局面になった」ということになる。エリオット波動論では、その「あとどのくらい続くのか?」という想定が他のテクニカルよりもしやすい。

2. エリオット波動は後付け?こじつけ?

エリオット波動は後付け?こじつけ?

上述したように、俺の意見は「エリオット波動は使える」である。
ただし、エリオット波動論には「この部分は実践で使えるのか?」と疑問に感じる部分、「これは覚えなくてよい」という部分が存在するのも事実である。

エリオット波動では後になってからでないと、その判断は出来ないよね? というものが多く存在する。

逆に出来上がったチャートであれば、どれかしらに当てはめられる。

実際に相場でメシを食っている実践家の立場で言わせてもらえば、理論としてはカッコいいけど、実際の相場では使えませんよとなる。

エリオット自身は相場師ではない。そして実践に基づいて考案したルールではなく、ダウ理論の研究者として考案した理論なのだ。だから実践的でない部分が含まれるのは仕方のないことである。では、「実践家でない者が考えた、理論やテクニカルが使えないか?」というと、そんなことはない。

世の中には多くのテクニカルやトレード手法が存在するが、考案した者が実践家ではなかったとか、相場師としてはプロとは言えないレベルだったという話は枚挙にいとまがない。

一つ例を上げると、ボリンジャーバンドを考案したジョン・ボリンジャーは相場師としては鳴かず飛ばずであり、プロのトレーダーと言えるレベルではない。では、ボリンジャーバンドが使えないのか?というとそんな事はなく、今も多くのトレーダーが利用している。

考案した者が相場師として成功していたか?ということとそのテクニカルや手法が使えるのか?ということは別問題である。

重要なのは「それを使ってトレードで利益を出せるのか?」という事である。

たとえ、理論の一部に使えない部分や実践的でない部分があったからと言って、全部を切り捨てるのはもったいない話だ。

使える部分が利益を出すのであれば、それは使うべきである。
エリオット波動に限らず、使う部分使わない部分の取捨選択が必要なのである。

2-1. エリオット波動が使えないと言われる理由

ここで、エリオット波動が使えないと言っている否定派の意見をまとめてみよう。
使えないと言っている連中で多いのは、以下のような意見だ。

  • 後講釈なら全て当てはまる。出来上がったチャートなら、後からどうとでも当てはめられる。
  • エリオット関連の書籍などに出てくる例が、あまりにも無理があるケースが少なくない。
  • 波のカウントや波の形状の判断に、主観が入るので解釈が人それぞれ違うから使えない。
  • 理論に矛盾が起きないように、無理矢理に当てはめて作ったと思われるルールがある。
  • エリオット自身は相場師ではなく、会計士だった。実践家でない者の理論は、信頼ができない机上の空論だ。

否定派の中には「エリオット」と聞いただけで、「トンデモだよ。オカルトだよ」とアレルギー反応を起こす人もいる。

2-2. エリオット波動の肯定派の意見

では、反対に、肯定派の意見はどうだろうか?使えると言っている肯定派の意見は、以下のようなものだ。

  • 環境認識をする時に、相場がどの段階であるのか? エリオット波動理論ならおおよその見当がつく。
  • エントリーポイント・利食いポイントが明確になる。
  • 次の相場展開のおおよその予想が立てられる。

このように両方の意見を紹介したのは、あなたにエリオット波動を中立の立場で客観的に見て、判断してほしいと考えたからだ。

3. エリオット波動はなぜ難しい?本当の使い方とは

エリオット波動はなぜ難しい?本当の使い方とは

エリオット波動論は、役に立たない部分があるのも事実だが、不勉強な者がカウントの仕方を間違えているといったケースも多い。また、その反対に、エリオット波動論を万能な理論だと勝手に妄想している者もいる。どんなテクニカル分析でも同じだが、何を目的に使うのかで、その有効性は変わってくるのだ。

3-1. エリオット波動の波のカウントは間違いやすい

エリオット波動に興味を持ちググってみると、大抵は以下のような図が出てくる。

elliott-wave

 

ところが実際の相場では、こんなにわかりやすい形のエリオット波動は、見つからないことが多い。

上のチャートは、実際のポンド円の日足チャートだが、どこにエリオット波動が見えるだろうか?

このように、エリオット波動が見つかるが、その後のABCが見本の図のようにあるだろうか?

上のチャートはポンド円の4時間足のチャートだが、下げのエリオット波動をどのようにカウントしたら良いのか?

どうだろうか?基本の図とされているような形とはほど遠いし、そもそも、このカウントが変更なく最初からできたのだろうか?

また、このようなカウントの仕方は間違いなのか? どうしても、分析する者の主観が入るので「これが正解」とか「世界標準」というものが存在しない。

だから、否定派に「後講釈で当てはめている」と言われてしまうのである。

3-2. 使い方を間違え、こじつけられるエリオット波動

「エリオット波動が使えない」と言っている否定派は、エリオット波動を相場の環境認識に使わず、チャートパターン分析のように「こうなったら、こうなる」といった、相場の先行きを当てようとする、いわゆるアテモノとして使おうとしているケースが多い。

「使える」ということの定義を、「当てること」とするのであれば、エリオット波動に限らず使えるテクニカル分析は一つもない。要するに、使い方を間違っているのである。

使い方を間違っているのは、肯定派の中にも多い。肯定派の中には、エリオット信者・原理主義者ともいえる熱心なファンがいるが、この者たちの傾向としては何でもかんでも、無理やりにエリオット波動論を当てはめようとする。これが、エリオット波動の信ぴょう性を下げる一因になっている。

俺の意見としては、「信じるのは良いけどほどほどに」だ。

否定派に対しては「食わず嫌いはやめなさい」と言いたいし、肯定派に対しては「信じるのは良いけど、原理主義にはなるなよ」と言いたい。

4. トレードに活かすための実践的な考え方

トレードに活かすための実践的な考え方

上記で触れたように、エリオット波動は相場の環境認識のために使うものであり、タイミングをはかったり、チャートパターンのように「こうだったらこう」というふうに使ったりするものではない。

しかし、環境認識として使うのであれば、物凄く使える強力な武器なのである。

相場は一つの理論や手法で説明できるほど、簡単な世界ではない。エリオット波動論だけで、相場を判断することは不可能だ。そのほかの色々な要素も、見て決めないといけない。

否定派にも肯定派にも、それぞれの主張と耳を傾けるべき点はある。しかし、それに耳を傾けても時間の無駄と俺は考える。

「理論を知りたいのか?」あるいは「金を儲けたいのか?」、あなたはどちらだ?

「エリオットの理論が正しいか、オカルト・インチキか?」というのはどうでも良い。大事なことは、その理論を使うと(たとえ一部分であっても)、「実際にトレードをする上で役に立つのか?」という視点で考えないといけない。この点において、俺の結論は「エリオット波動は役に立つ」である。

5. おわりに 相場の本質を理解するために

相場の本質を理解するために

ここでは、エリオット波動が使えるのか?使えないのか?否定派・肯定派の意見を紹介した。俺の結論は「使える」である。ただし、エリオット波動には覚えなくても良い部分、実践で役に立たない部分、それは無理やり過ぎるだろという理屈が混ざっている。

しかし、このサイトではエリオット理論で言われていることは全て記載してある。それは、根本となるものを全て理解した上で、俺が無駄と感じた部分が「どうして、そうなのか?」という点まで細かく説明し、あなたに本質を理解してもらいたいからだ。

省略した部分を暗記したとしても、実践では役に立たない。「どうしてその結論に行き着いたのか?」とプロセスから理解することにより実践で使える知識となり、チャート分析に役立つと考えている。遠回りに聞こえるかもしれないが、この部分を理解するとエリオット波動を理解することになり、相場の本質を理解することが出来る。

エリオット信者・原理主義者ではないが否定派ではないという立場で、次の記事からはいよいよ、エリオット波動の本格的な解説に入っていく。

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注意
エリオット波動は覚えることがかなり多いので、初心者が1度で完璧に覚えることは不可能である。
このサイトでは、同じ内容が複数回出てくることもあるが、これは覚えたことを忘れてしまっていても、スグに復習できるように意図してのことだ。