エリオット波動のカウントの仕方。見極めには3つの基本ルールの理解が重要
この記事では、エリオット波動を理解する上で、重要な3つの基本ルールについて説明する。記事を読み終える頃には、エリオット波動の根本的な考え方が理解できるようになる。全てはコレの応用だからだ。
エリオットは、レストランと鉄道会社の会計を専門とする会計士だった。中央アメリカやメキシコなどで仕事をしていたが、重病にかかりカリフォルニアの自宅で数年間の療養生活を送ることになる。
ある日海を眺めていたときに、大きな波を3回やり過ごしてから、沖に向かってボートを漕ぎ出す漁師を見て、海の波は大きな3つの波の後に、小さい波が来て、また大きな波が3回くることに気がついた(実際に海の波は、そうなっている)。
相場は大勢の人間の欲望や恐怖、色々な思惑が入り混じり値動きを形成する。このような値動きは、あらゆる人間の行動を支配している広い意味での自然の法則が作用しているとエリオットは信じていた。
だから、「自然界の法則で動く海の波と同じように、相場にもそのサイクルが作用するのではないか?」と彼は考えた。以下の図を見るとエリオット波動は、この考え方が元になっていると感じられるだろう。
この考え方を念頭に入れた上で、この先を読み進めていくと理解が深まる。
目次
1. エリオット波動のカウントの仕方
エリオット波動では、値動きの波の終わりに、「1 2 3 4 5 A B C」と記入していく。他の書籍・他のサイトでも、ほとんどの説明が以下のような図でされている。
この図は、見慣れた図ではあるが、「どこが1波で、どこが2波なのか?」と迷う者がいるといけないので、以下の図で説明する。
こうすると、どこからどこまでが1波で、どこからどこまでが2波かといった波のカウントの仕方がイメージできるだろう。「1波」、次の波が「2波」、「3波」、「4波」、「5波」と続いている。反対に、下落する方向の波形は「A波」、「B波」、「C波」となっている。
これらは、エリオット波動の基本となる形なので、覚えておいてほしい。
1-1. エリオット波動のカウントは本当に難しい
前記事「エリオット波動が使えない真の理由。こじつけ・後付けの真相は使い方の誤り」 でも言ったが、エリオット波動の図として世間で出回っているような形は、実際には見られないことが多い。
このチャートは、実際のポンド円の日足チャートだが、どこに見本の図のようなエリオット波動が見えるだろうか?
このように、エリオット波動が見つかるが、その後のA、B、Cが、見本の図のようにあるだろうか?
これは、5波の後にレンジになっている部分が修正波なのだが これを、どうやって修正の3波とカウントするのか?どう見てもA、B、Cと修正しているようには見えない。
それを無理やりに当てはめようとすると整合性が取れなくなってくる。この場合は単純に修正がA、B、Cであると無理やり当てはめるよりは、5波が終わってレンジが出来て再び上昇を始めたと解釈した方が自然だ。
別の例をだそう。上図のチャートは、ポンド円の4時間足のチャートだが、下げのエリオット波動をどのようにカウントしたら良いのか?
どうだろうか?基本の図とされているような形とはほど遠いし、そもそも、このカウントが正しいのだろうか?
また、このようなカウントの仕方は間違いなのか?
「エリオットがどうして波動論を思いついたのか?そんな話はいいから早くコレを使ったトレード方法を教えてよ!!」「どう使ったらいいのか?コツだけを教えてよ。」という気持ちの人もいるだろう。
その気持ちはよくわかる。だが、正確なカウントが出来るようになるには、次章で述べる、3つの基本ルールを理解しないことには始まらない。この基本ルールは、何度も読み返してほしい。では早速、3つの基本ルールについての説明を始める。
2. エリオット波動3つのルール 原則の理解がマスターの鍵
エリオット波動には、以下の3つの基本となるルールがある。
- ルール1
- 5つの波で推進し、3つの波で修正する。
- ルール2
- ルール1の状態が幾つも重なって、フラクタル構造(入り子状)になっている。
- ルール3
- 波のパターンには5つの形がある。それらが色々な形で組み合わさり、さまざまな波動が作られる。
こういわれて、「あー、なるほど。ふむふむ」となる人はいないだろうから、1つずつ詳しく説明していく。
2-1. エリオット波動の原則1 推進波と修正波を簡単解説
この章ではまず、基本ルール1の「5つの波で推進し、3つの波で修正する」について解説していこう。
エリオット波動は、5つの波の推進波と、3つの波の修正波で構成される。いわゆる推進は5波、修正は3波といわれているものだ。
前述した、エリオットが海を見て気がつき、最初に考えたのがこれだ。
2-2. エリオット波動論を難しくするアクション波とリアクション波
波の種類で、アクション波とリアクション波というものがある。アクション波は、メジャートレンドの方向に進む波のことであり、リアクション波は一時的に逆行する方向に進む波のことである。
巷ではほとんどの場合、「推進波=アクション波、修正波=リアクション波」と解釈している者が多い。しかし、厳密にいうと同じではない。
非常に紛らわしい話ではあるが、同じではないのだ。意味がわからないという人が多いだろう。俺も最初は、その違いがわからなかった。
もう一度 両者を比較してみる。
推進波は、メジャートレンドの方向を推進する波の形のこと。
アクション波は、メジャートレンドの方向に進む波のこと。
どうして誤解している人が多いかというと、ひとまわり大きいエリオット波動をフラクタル構造(フラクタル構造は、この後に説明)で見た場合、1から5の波がひとまわり大きい1波となり、それがアクション波になるから、「アクション波=推進波」と解釈しても不都合がない点にある。
最初は俺も、英語か日本語かの違いでしかなく、一緒のものを指していると考えていた。そして、今でもコレを厳密に定義して、分けている理由がわからない。「シンプルな話を、ワザと複雑にしてないか?」とさえ感じる。
2-3. エリオット波動の原則1を簡単にまとめると
基本ルール1をまとめると、推進は5つの波、修正は3つの波となる。
メジャートレンドの方向に5つの波で進んでいく形を推進波といい、メジャートレンドの方向に進む波をアクション波という。メジャートレンドに一時的に3つの波で逆行する形を修正波といい、メジャートレンドに一時的に逆行する波をリアクション波という。
深久から一言
だったら、「修正波が3つの波以外で、修正した場合は何ていうんだよ?」とツッコミを入れたくなるだろう。俺もそうだった。そのあたりのことは後述する。
3. エリオット波動の原則2 フラクタル構造
基本ルールの2つ目は、前章で触れたフラクタル構造である。もしかしたら、あなたにとっては少しとっつきにくい言葉かもしれないが、フラクタル構造を理解すれば、エリオット波動波のカウントの仕方がより鮮明になる。
3-1. エリオット波動の見極めにフラクタル構造の理解が必須
エリオット波動の全ての波は、フラクタル構造(入り子状)になっている。「5つの波で推進し、3つの波で修正する」の状態が、幾つも重なって、フラクタル構造(入り子状)になっている。
エリオット波動は、チャートを見る者の主観で幾らでも解釈が変わってくる。なので、知識としてエリオット波動の特徴を理解したつもりだけど、いざ実践するときに使い方がわからないというケースが多い。
「どうやって、波をカウントしたら良いのか?」「今は、波のどのあたりなのかわからない」ってことが起きる。エリオット波動を学び始めた、多くの人が陥りがちな悩みだ。
こういうときに、時間軸の小さいチャートを分解して、推進波や修正波を構成している小さな波(副次波)を見ると解決することがある。なぜなら、エリオット波動の波はフラクタル構造になっているからだ。逆をいえば、コレを理解しないで波をカウントすることは不可能である。
深久から一言
フラクタル構造という言葉を聞いて、「あー、難しそうー。無理ー、寝よう」となるかもしれない。確かにフラクタル構造は、エリオット波動の分析を難しく感じさせる要素の1つでもある。
3-2. FXのチャートにも頻出するフラクタル構造とは?
フラクタル構造を一言で説明すると、「小さな一部分が、全体の構造と同じ形をしている」ことだ。これは、FXのチャートでも、よく見られる現象である。フラクタル構造という言葉を見ると難しく感じるだけで、理解してしまえば何でもない。
とはいえ、フラクタルとか入り子状と言われても、イメージがわかないかもしれない。これは図で説明しないと、理解ができないだろう。
上の図を見てほしい。
(1).(2).(3).(4).(5)と波動があって、(1)の波を細かく見ると、その中にも①.②.③.④.⑤と小さな波があることがわかるだろうか。そして、(1)の波を構成している5つの小さな波は、推進5波((1)~(5))と同じ形状になっている。これを、フラクタル構造(入れ子状)という。
チャートに反映される値動きも長期足から短期足まで、実はフラクタル構造(入れ子状の構造)になっているというのがエリオット波動の考え方だ。
この考え方をマスターすると、前述した波のカウントが明確になるだけでなく、エントリーポイントの精度が改善する。
ゆえに、トレードの成績が大きく変わる者が多い。
「目の前の霧が晴れたような気持ちになった」
「勝てようになった」
「エントリーの精度が上がった」
という声がかなりあり、俺がエリオット波動の使える部分と考える要素の1つである。具体的な使い方は、次回以降の記事で説明していこう。今は基本ルールを頭に入れることに、集中してほしい。
4. エリオット波動の原則3 波形は5パターン
基本ルールの最後は、エリオット波動の波には、5つの形があるということだ。それらが色々なパターンで組み合わされ、さまざまな波動が作られる。ここでは、この5つの波形を簡単に紹介しよう。
推進波では、インパルス(衝撃波)、ダイアゴナルという波形がある。修正波では、ジグザグ、フラット、トライアングルという波形が存在する。
また、ダイアゴナル、フラット、トライアングルでは、基本形以外にも拡大型の形もある。基本的な5波形と、拡大型の3波形を合わせた8波形は、エリオット波動の代表的な波形となる。
これらの5つの波形について、あなたにきちんと理解してもらうには、かなり説明が必要になり、俺にとっても骨の折れる仕事である。しかし、複雑な波形のパターンを、頭に入れておくことにより、今何が相場で起こっているのかが認識できるようになるだろう。エリオット波動の基本的な5波形と、拡大型の3波形の詳細については、次の記事で解説していこう。
5. おわりに エリオット波動を投資で使うために
エリオット波動には、以下の3つの基本となるルールがある。具体的なことは、次の記事で詳しく説明していくので今は、この3つが重要なんだと頭に入れた上で、以下の基本ルールをもう一度、見てほしい。
ルール1 5つの波で推進し3つの波で修正する。
エリオットが海を見て思いついたものが基本となっている。
トレンド方向に進むのは5つの波(推進) 押しや戻りなどの調整をする波が3つ(修正)
ルール2 ルール1の状態が幾つも重なって、フラクタル構造(入り子状)になっている。
カウントに悩むときに、違う時間軸を見ることで「相場がどの段階の波なのか?」ということが理解できるようになり、カウントがしやすくなる。
ルール3 波のパターンには5つの形がある。それらが色々な形で組み合わさり、さまざまな波動が作られる。
ルール3については、次の記事で詳しく波の形を説明する。
多くの人は、なにか知識が入ると、一度に完璧に理解しようとするが、どんなに記憶力の良い人でも無理な場合が多い。特にエリオット波動は、知識だけ頭に入っても、相場で通用しない。
実践で通用する知識や技術というのは覚えるというより、何度も何度も反復することにより「染み付いた習慣」「考えるより先に体が動く」といった感覚に近い。だから記事だけを読んで理解した気にならず、自分で何度もチャートを見て分析する練習をしてほしい。
次の記事では 5つの波形のウチの推進波である「インパルス」と「ダイアゴナル」について説明する。